海と歴史に包まれて——小樽「銀鱗荘」で過ごす特別なひととき
北海道・小樽の高台に佇む、重厚で風格のある日本建築。
今回ご紹介するのは、まるで時代をさかのぼるかのような特別な空間——小樽 銀鱗荘です。
その外観からすでに物語が始まっており、館内に一歩足を踏み入れると、まるで和の美術館を巡るような時間が流れていきます。
小樽の高台に建つ、威風堂々たる数寄屋建築
「銀鱗荘」は、昭和13年(1938年)、鰊漁で巨万の富を築いた網元・青山家の邸宅を移築して開業した高級旅館。
豪壮な数寄屋造りの建築と、樹齢数百年の梁や柱が織りなす空間は、日本の伝統美を凝縮したような世界です。
写真に写る正面の門構えからすでに堂々としており、瓦屋根と白壁、きめ細かく整えられた庭木が迎えてくれます。
建物のあちこちに配された欄間、床の間、障子、そして屏風など、どこを切り取ってもまるで映画の舞台のよう。
眼下に広がる小樽港と日本海の絶景
銀鱗荘が建つのは、小樽の街と海を見下ろす高台・潮見台。
宿からは、小樽港全体と、その先の石狩湾が一望できる贅沢な眺望が広がります。
特におすすめは、晴れた日の午後。
写真にもあるように、澄み渡った青空と紺碧の海が溶け合い、遠くには積丹半島の山並みがくっきりと浮かび上がります。
海に沈む夕日や、夜にまたたく港の灯も幻想的で、何度見ても飽きることのない絶景です。
館内で過ごす、優雅で静かな時間
館内は、太く磨かれた梁が美しいロビーラウンジや、調度品が並ぶ和室、古美術を思わせる屏風や飾り棚など、どこも趣たっぷり。
写真にある和室の広縁では、障子越しに光が差し込み、まるで時間が止まったような静けさに包まれます。
スタッフの方々の対応もとても丁寧で、心のこもったおもてなしと静寂の空間が、まさに「大人のための宿」という印象を強く残しました。
北海道の海と山の恵みを味わう料理
銀鱗荘のもうひとつの魅力が、料理長が腕を振るう会席料理。
北海道近海で水揚げされた海の幸を中心に、季節の食材をふんだんに使用した料理は、どれも芸術品のように美しく、そして滋味深い味わい。
前菜から甘味まで、料理が運ばれてくるたびに驚きと感動があり、“食べる時間”がひとつの旅の目的になるような体験ができます。
アクセス情報
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所在地:北海道小樽市桜1丁目1番地
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アクセス:
・JR小樽駅から車で約10分
・新千歳空港から高速道路利用で約1時間30分
・小樽市内・近隣観光地への送迎も一部あり(要確認) -
駐車場:無料完備
公共交通でもアクセスしやすく、観光とあわせて優雅に滞在できる立地です。
客室紹介:和の心と絶景が調和する、非日常の空間
銀鱗荘の客室は、すべてが和の意匠を大切にした落ち着きのある造りで、まるで老舗料亭の離れに滞在しているかのような特別感があります。
客室ごとに趣が異なり、檜の香り漂う和室や、書院造の空間、広縁からの眺めが素晴らしい部屋など、それぞれが「ひと部屋ひと世界」。
ふすまや欄間、畳の香り、障子越しの光——
どの要素も日本建築の美しさが凝縮されていて、心がゆったりと解けていくような感覚が味わえます。
特におすすめは「海側のお部屋」。
カーテンを開ければ、小樽の港が眼下に広がり、朝焼けから夜景まで、時間によってまったく違う表情を楽しめます。
夕食レポート:一品一品が芸術品。北海道の旬を味わい尽くす会席料理
銀鱗荘の夕食は、まさに「和食の極み」。
料理は懐石スタイルで供され、北海道の四季折々の食材が、洗練された技術と器で美しく表現されています。
この日の献立から一部ご紹介すると——
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先付:旬の山菜と白胡麻和え、道産の帆立貝柱の燻製
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椀物:毛蟹のしんじょ椀 柚子の香りを添えて
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お造り:噴火湾産のマグロ、北寄貝、平目、ウニなど
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焼き物:時知らずの幽庵焼き/アスパラの塩焼き添え
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煮物:蝦夷アワビの柔らか煮 黒煮汁仕立て
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ご飯もの:季節の土鍋炊き込みごはん、香の物
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水菓子:メロンのジュレと黒豆の羊羹/抹茶クリーム掛け
一品ごとに「おもてなしの心」と「季節感」が詰まっていて、ただ美味しいだけでなく、心まで豊かになるような食体験でした。
器や盛り付けにもこだわりがあり、どの皿も目でも楽しめる美しさ。
静かな個室で、丁寧なサービスとともにいただく食事は、まさに「旅のハイライト」です。
季節ごとの楽しみ方:銀鱗荘でめぐる四季の魅力
銀鱗荘は、小樽の海と空、そして四季のうつろいを感じられる“季節の宿”でもあります。
どの季節に訪れても、異なる表情と魅力に出会うことができます。
春:海霧と桜の風景
4月中旬から5月上旬にかけては、小樽の町にも春が訪れます。
宿の庭園には山桜が咲き、早朝には海霧(うみぎり)に包まれた幻想的な港の風景を望むことも。
海と桜が一緒に見られるロケーションは、銀鱗荘ならではです。
夏:窓を開ければ潮風と緑の香り
夏の銀鱗荘は、涼やかな風と深い緑が心地よい季節。
エアコンに頼らずとも快適に過ごせる気候で、障子を開けて広縁でうたた寝したり、夜は虫の声を聞きながら過ごしたり…。
「涼を楽しむ宿」としての真価を発揮します。
秋:紅葉と海の青のコントラスト
10月中旬〜11月上旬になると、館内の庭木や周辺の山が美しく色づきます。
紅葉と日本海の深い青が織りなす“和の絶景”は、まさにこの季節だけのご褒美。
料理にも秋刀魚やきのこ、栗などの味覚が加わり、食欲の秋も満たされます。
冬:雪に包まれた静寂と、灯りの温もり
12月〜2月の銀鱗荘は、雪景色の中に佇む白と黒の建築がまるで水墨画のよう。
雪見障子から差し込む光や、露天風呂からの湯煙越しの雪化粧など、冬ならではの静けさと美しさがあります。
年末年始は特別懐石やお雑煮も登場し、和のお正月を体験できるのも魅力です。
おわりに:静と華が共存する、唯一無二の宿へ
小樽・銀鱗荘は、ただの旅館ではありません。
それはまるで「日本の美意識を体感するための舞台」のような場所。
外の喧騒から離れ、歴史ある建物に包まれ、静かに海を眺め、美味を味わう——
そんな豊かさが、ここにはあります。
北海道の旅に“格の違う一夜”を加えてみたい方へ。
小樽の丘に立つこの名旅館は、きっと忘れられない時間を届けてくれるはずです。
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