【完全ガイド】障害者手帳を転職で活かす方法｜働き方・制度・交渉のコツまで

障害者手帳は「就職に不利」ではなく「働きやすくするための武器」。正しい活用法を知ろう

障害者手帳を持っていると「就職に不利になるのでは…」と不安に思う方もいますが、実は逆に、安心して働くためのサポートを受けるための大切な武器になります。制度や支援を正しく理解して活用すれば、自分に合った働き方が実現しやすくなります。ここでは、障害者手帳の活用法について詳しく紹介していきます。

そもそも障害者手帳って転職活動でどう使えるの？

障害者手帳は、就職活動や入社後の働き方において、自分に必要な配慮を受けるための大切な証明書になります。企業も障害者手帳の提示によって制度上の支援や合理的配慮を提供しやすくなり、働きやすい環境が整いやすくなります。転職活動でも、使い方やタイミングによって活用の仕方が変わってきます。

応募時に使う？入社後？タイミングで変わる使い方

障害者手帳の活用は、応募時に使う場合と、入社後に伝える場合とで使い方が少し異なります。どちらのタイミングで伝えるかは、自分の希望や企業の募集形態によって変わってきます。

障害者手帳を使うタイミングによる活用法の違い

応募時に障害者手帳を提示する場合は、障害者雇用枠での応募となり、配慮を前提とした選考が受けられます。企業もあらかじめ特性や配慮事項を考慮した上で面接が進むため、自分に合った働き方を相談しやすくなります。一方、入社後に伝える場合は、一般枠で採用された後に配慮が必要になったタイミングで申し出る形になります。ただし、あとからの申告は企業側の準備期間が短くなるため、できるだけ早めに伝えておく方が安心して働きやすくなります。

タイミング	メリット	デメリット	向いている人	注意点
応募時	障害者枠求人が選べる／配慮の提示がしやすい	応募段階で障害が開示される	継続的な配慮が必要な人	面接での説明準備が必須
内定後（入社前）	条件交渉や配慮の確認がしやすい	企業によっては理解が浅い場合も	環境次第で伝えたい人	書面での合意を取りたい
入社後	自分のペースで様子を見ながら開示できる	配慮が受けられない期間が発生	徐々に慣れたい人／体調安定後に開示	職場との信頼構築が前提

書類提出の有無／求人選定の基準としての役割

障害者手帳を活用する場合、応募先によっては事前に手帳のコピーや写しの提出を求められることがあります。特に障害者雇用枠では、手帳が制度利用の前提となるため、書類提出が必要になるケースが多いです。また、手帳の有無は求人選定の基準にも関わります。障害者手帳を持っていることで応募できる求人は、配慮を前提とした職場環境が整っていることが多く、自分に合った働きやすい職場に出会いやすくなります。逆に、一般枠で応募する場合は書類提出が不要なケースもありますが、配慮を受けるには後からの相談が必要になります。

「使わないと損」な求人・制度・支援一覧

障害者手帳を活用することで利用できる求人や支援制度はたくさんあります。たとえば「障害者雇用枠の求人」「就労移行支援」「転職エージェントの障害者専門サービス」「ハローワークの障害者専門窓口」「職場定着支援（定着支援事業）」などがあります。また、障害年金や通勤定期の割引、税制上の優遇措置など、生活面の支援制度も手帳によって受けられる場合があります。これらの制度は、自分の負担を減らしながら安定して働き続けるために役立つものです。障害者手帳を上手に活用することで、働き方の選択肢が大きく広がります。

活用対象内容対象者得られるメリット見落としがちなポイント障害者枠求人配慮前提の求人／勤務形態に柔軟性あり手帳所持者面接段階から配慮あり／負担軽減求人内容に具体性があるかを確認就労移行支援転職準備・訓練・就労後のサポート就労に不安のある人継続就労の可能性が高まる相談→体験→通所と段階的に進む障害者職業センター職業評価・アセスメント提供自分の特性が言語化しづらい人面接での自己説明がしやすくなる利用には申請が必要な場合も助成金制度雇用開始時に企業側に支給手帳所持者を雇う企業採用しやすくなる要因に制度の存在を企業側が知らないことも

障害者枠求人／通院配慮／助成金対象などの利点あり

障害者手帳を活用すると、障害者雇用枠の求人に応募できるほか、通院や体調に配慮してもらいやすくなります。また、企業側も助成金などの支援制度を活用できるため、職場としても配慮体制を整えやすくなるメリットがあります。企業・本人双方にとって働きやすい環境づくりが進めやすくなるのが、障害者手帳を活用する大きな利点です。

手帳を活用して“働きやすくなる”3つの転職術

障害者手帳は「不利になるもの」ではなく、働きやすくなるための「転職の武器」です。ここでは、手帳を上手に活用して働きやすさを手に入れる転職のポイントを紹介します。

① 自分の「得意・不得意」を伝えて職場を選ぶ

障害者雇用では、企業も応募者の特性を理解した上で採用を検討します。そのため、自分の得意・不得意を整理し、事前に伝えておくことが、ミスマッチを防ぎ安心して働くカギになります。苦手なことを無理に隠すのではなく、工夫すれば乗り越えられる部分や、サポートがあれば安心できる場面を具体的に整理しておきましょう。

自分の特性	得意なこと	苦手なこと	配慮してほしい点	合いそうな職場
感覚過敏あり	一人作業に集中	大きな音／光に敏感	静かな環境／明るさ調整	在宅ワーク／特例子会社
書くことが得意／話すのが苦手	文章によるやり取り	電話・雑談対応	メール中心の業務	事務／データ入力職
状況判断に時間がかかる	ルーチン作業が得意	即判断・即返答が苦手	ゆっくり進められる業務	事務補助／軽作業

障害内容を軸に業務内容や環境を整理

転職活動では、自分の障害内容や特性を整理し、それに合わせて働ける仕事内容や職場環境を明確にすることが大切です。たとえば、マルチタスクが苦手なら「一つずつ進められる作業」、聴覚や感覚が敏感なら「静かな職場環境」など、特性に合った業務内容を整理していきます。こうして整理することで、企業に具体的な希望を伝えやすくなり、ミスマッチを防ぐことにつながります。

② 配慮してもらいたいポイントを明文化しておく

配慮が必要なポイントは、事前に整理して「言葉にしておく」ことが重要です。企業側は障害特性のすべてを理解しているわけではないため、必要な配慮をできるだけ具体的に伝える工夫が大切になります。伝える内容を事前に整理しておくことで、面談でも落ち着いて説明しやすくなります。

配慮希望を“伝わる形”に整えるチェック表

配慮項目	状況の具体例	伝える理由	調整してほしい内容	一言で伝える例
通院頻度	週1で午前に病院通いあり	継続治療のため勤務調整が必要	その日は午後出勤 or 休み希望	「週1で午前中に通院があります」
体調変動	月数回、集中力が落ちる日あり	無理せず勤務継続したい	業務量や時間の一時調整	「体調に波があり、調整いただけると助かります」
環境配慮	音に敏感で集中しづらい	職場環境によって作業効率が変わる	静かなスペース／席配置の調整	「静かな場所で作業できると集中しやすいです」

「言いづらい」ではなく「伝える」がカギ

配慮をお願いすることに対して「言いづらい」「迷惑をかけるのでは」と感じる方も多いですが、配慮を求めるのは働きやすく長く続けるために必要な大切な準備です。企業側も具体的に伝えてもらうことで、働きやすい環境を整えやすくなります。遠慮せず、きちんと伝える姿勢が結果的に企業との信頼関係づくりにもつながっていきます。

③ 面接で“配慮されたい理由”を伝える方法

面接の場では、配慮してほしい内容だけでなく「なぜそれが必要なのか」という理由もあわせて伝えることが大切です。理由を説明することで、企業側も配慮内容を理解しやすくなり、実際の職場での対応もしやすくなります。無理に深刻に伝える必要はなく、「安心して長く働くために必要な工夫」として前向きに説明するのがポイントです。

面接で“配慮されたい理由”を納得感をもって伝える構成

構成パーツ	内容例	ポイント
①自己理解の説明	「私は音や人の声に敏感で、集中が途切れやすい特性があります」	単に「苦手」ではなく、“特性”として説明
②働く意欲の提示	「ただし、一人で集中する作業は得意で、書類作成などで力を発揮できます」	苦手の裏にある強みをセットで話す
③具体的な配慮希望	「そのため、作業環境における静かなスペースの配慮をお願いしたいです」	配慮内容は具体的に＆現実的に

単なるお願いでなく「働くために必要な工夫」として伝える

配慮をお願いする際は「お願い事」として伝えるのではなく、「自分が安定して力を発揮するための具体的な工夫」として伝えることがポイントです。企業側も「どのように支援すれば、この人が長く安心して働けるのか」を理解しやすくなります。前向きな姿勢で説明することで、配慮はネガティブなものではなく、安定して仕事を続けるための前向きな準備だと捉えてもらいやすくなります。

履歴書・職務経歴書にも一工夫｜手帳を活かす書類作成のコツ

障害者手帳を活用して応募する場合、履歴書や職務経歴書の書き方にも少し工夫を加えることで、企業に安心感を与えやすくなります。「できること」と「配慮してほしいこと」をバランスよく整理して書くことがポイントです。

職務経歴書には「できること」「配慮希望」を両立させて書く

職務経歴書では、まず自分がこれまでに経験してきた業務や得意なことをしっかりアピールします。そのうえで、必要な配慮についても具体的に明記することで、企業は採用後のイメージを持ちやすくなります。「苦手」や「できないこと」だけを書くのではなく、「こうすれば安定して取り組める」という視点を持って記載するのがコツです。

セクション	記載内容のポイント	実例	印象を高めるコツ
業務実績	数値・結果で強みを見せる	「事務職として月100件の処理をミスなく対応」	定量化で信頼性UP
得意分野	強みと特性を絡める	「マルチタスクより、コツコツ型作業に集中力を発揮」	特性が“強み”になる表現を
配慮希望	働き続けるための必要条件を明記	「静かな作業環境、定期的な面談があると安定しやすい」	“職場に貢献したい”意図を添える

履歴書での記載例と、書かない場合の配慮ポイント

履歴書に障害者手帳の情報を記載するかどうかは、応募先や応募方法によって異なります。障害者雇用枠で応募する場合は、多くのケースで履歴書に障害者手帳の所持を記載します。一方で、一般枠で応募する場合は、必ずしも記載する必要はありません。記載する・しないにかかわらず、自分の状況に合わせて準備をしておくことが大切です。

状況	記載する場合	記載しない場合	補足・工夫ポイント
メリット	配慮の必要性を事前に伝えられる	書類選考で“中立的”な判断を受けられる	両方のメリットを理解して選択を
書き方	「精神障害者保健福祉手帳（3級）所持、通院中」	特に記載せず、口頭で説明予定	備考欄 or 別紙メモとして添える方法も可
注意点	書く内容の具体性が大切（通院頻度・症状の安定性など）	面接時に突然伝えると混乱を招く場合あり	職務経歴書で補足する方法も有効

就職活動中に利用できる制度や支援と連携する方法

就職活動中は、体調や経済的な不安を感じやすい時期でもあります。そんなときに役立つのが、公的制度や支援機関の活用です。制度をうまく利用すれば、無理をせず自分のペースで転職活動を進めることができます。ここでは、就職活動中に利用できる制度や支援について紹介します。

傷病手当金を活用して、焦らず転職を考える時間を確保

退職前の休職期間や、退職後に体調回復のための時間が必要な場合、健康保険の「傷病手当金」を活用できることがあります。傷病手当金は、療養のために働けない期間の生活費を補助してくれる制度です。これを活用すれば、収入面の不安を軽減しながら、焦らずに転職活動を進める時間を確保することができます。

傷病手当金を受け取りながら、安心して転職活動を整える流れ

傷病手当金を受給するためには、医師の診断書と会社や保険組合への申請が必要になります。休職期間中や退職後も条件を満たせば支給が継続される場合があり、その間に支援機関を利用して就職準備を整える方も多いです。たとえば、就労移行支援を活用して働く練習を積みながら、少しずつ自信をつけていくことが可能です。傷病手当金を上手に活用することで、経済的な焦りを減らしながら「体調が整ってから転職する」という安心の準備期間を持つことができます。

ステップ	やること	ポイント	メリット
1.医師に相談	診断書を取得	働けない状態であることの証明	支給対象かどうかの判断材料
2.申請書提出	健保組合に必要書類を郵送	会社への報告と並行して行う	最長1年6ヶ月の金銭的サポート
3.療養と転職準備	支給を受けながら休養・支援相談	焦らず次の職場選びに向き合える	心身のリカバリーに集中できる

障害年金を受け取りながら、働き方を再設計するケースも

精神障害がある場合、障害年金を受給しながら働く道を選ぶ人も少なくありません。障害年金は「働けない人のため」だけの制度ではなく、「無理なく働けるように収入面をサポートする制度」として活用することができます。障害年金を受けながら段階的に就労を始めることで、生活の安定と就職準備の両立がしやすくなります。

障害年金と就労の両立を考えた“再設計のステップ”

ステップ	状況	活用できる制度	工夫したこと	結果
休職中	働けないが生活費が不安	障害年金（精神2級）	医師に等級の妥当性を相談	申請通過で安心感が得られた
再始動前	働きたいが体調に不安あり	年金＋短時間勤務	通勤日数を減らす／在宅勤務併用	継続就労が可能に
転職時	手帳活用し障害者雇用枠へ	障害者枠＋年金継続	勤務収入と年金のバランス調整	安定収入と働きやすさを両立

障害年金と就労を両立させることで、いきなりフルタイム勤務に戻るプレッシャーを減らしながら、自分に合った働き方を無理なく築いていくことができます。

就労支援事業所や支援員と連携して「伝え方」を整える

就職活動では、自分の特性や配慮希望をどのように企業へ伝えるかがとても重要なポイントになります。支援員と一緒に整理しておくことで、言葉にしづらいことも整理しやすくなり、面接や入社後の相談もスムーズに進めることができます。就労移行支援事業所や定着支援の支援員は、経験豊富な第三者の視点からアドバイスしてくれる心強い存在です。

支援員と連携して“伝え方”を整える場面別チェック表

場面	よくある不安	支援員ができること	利用者がやること	伝えるときのコツ
面接準備	配慮の伝え方が不安	面接練習で想定質問を確認	回答の型をメモして繰り返す	「必要理由＋協力意志」のセットで話す
履歴書記載	何を書けばいいかわからない	記載例や言葉選びをサポート	自分の言葉で表現し直す	書きすぎず、整理して一言で伝える
配属面談	何を伝えるか迷う	事前に配慮内容を一緒に整理	優先順位をつけて話す	配慮だけでなく、できることも伝える

働きずらさを感じている人におすすめの転職サービス

障害者手帳を活用して転職を考えるときは、自分ひとりで悩まずに専門の支援サービスを利用することが大きな助けになります。ここでは、働きづらさを感じている方におすすめの転職サービスを紹介します。

dodaチャレンジ｜ストレスを減らせる環境を一緒に考えてくれる

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dodaチャレンジは、障害者雇用に特化した転職エージェントです。専任のキャリアアドバイザーが配慮が必要な場面や不安に感じるポイントを丁寧に聞き取りながら、無理のない働き方を企業と一緒に考えてくれます。企業とのやりとりもサポートしてくれるので、転職活動に慣れていない方でも安心して進めることができます。

LITALICOワークス｜働く前に心の準備ができる就労支援

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LITALICOワークスは、就労移行支援の中でも障害特性に合わせたプログラムが充実しています。生活リズムの安定、ビジネスマナーの習得、職場実習など、働く前に必要な準備を段階的に積み重ねることができます。支援スタッフが一人ひとりに寄り添いながらサポートしてくれるので安心です。

ランスタッド｜大手だから安心して相談できる環境がある

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ランスタッドは、世界的に展開する大手人材サービス企業です。障害者雇用にも力を入れており、専門のコンサルタントが希望や特性を丁寧にヒアリングしながら求人を紹介してくれます。初めての転職活動でも安心して相談できる体制が整っています。

atGP｜理解ある職場紹介で再出発を後押ししてくれる

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atGPは、障害者雇用に特化した転職サービスです。精神障害・発達障害の特性に理解のある企業を中心に紹介してくれるため、自分に合った職場を見つけやすいのが特徴です。就職活動から職場定着まで一貫してサポートしてくれるので、長く安心して働き続けられる環境が整います。

ミラトレ｜小さな練習から始められる就労移行支援サービス

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ミラトレは、生活リズムの安定からスキル習得、職場実習まで段階的にサポートしてくれる就労移行支援サービスです。無理のない小さなステップを積み重ねて自信をつけていくことができ、安心して就職活動へ進める環境が整っています。

【まとめ】障害者手帳転職活用方法｜“使う”ことで働き方は変えられる

障害者手帳は「就職に不利なもの」ではなく、「働き方を自分に合わせて整えるための大切な道具」です。制度や支援サービスを正しく知り、上手に活用していくことで、自分らしく働ける職場を見つけることができます。ひとりで悩まず、専門の支援を活用しながら安心できる転職活動を進めていきましょう。

さまざまな転職サービスを比較してみたい方へ

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厚生労働省「こころの健康」ページも参考になります